「君の名は。」を観てきました。予告編で知って、公式ホームページなどをみてかなり期待していましたが、結果的には期待以上の作品でした。
以下、ネタバレを含みますので、まだご覧になっていない方はご注意ください。ご覧になられてからもう一度読みに来てくださると、とても嬉しいです。
公式の資料等参照せずに、記憶で書いているため、正確でない記述があったら申し訳ございません。
本映画の最大の魅力は、やはり美しい風景描写になるのではないかと思います。過去の作品に比べて質が落ちたと言う方もいますが、私はそれは気になりませんでした。
絵をいくらリアルに描いても、写真を超えることはできないと思うのですが、新海監督は、絵をリアルにするだけではなく、実物以上に魅力的に映るように加工もしています。
絵に嘘が描かれているといえばそうなのですが、東京が、実際にはさびれたところもあったり、薄暗いところがあったりと暗い面もあるわけですが、それが、光に満ちた、ひたすら輝かしい街として描かれていたります。でも、心の持ち用によっては、こんな風に(実際の風景以上に美しく)見えることもきっとあるのだと思います。人の目は、主観によって大きく物の見え方を変えるものではないでしょうか。
実物以上に魅力的になっている風景描写は、風景を見ているキャラクターの主観が反映したものなのだと解釈しました。ともかく、そんな風景描写が一つ目の魅力。これは、山に登って綺麗な風景をただ見るだけで感動する。そんな感覚に似たものです。それが、映画を観終わった後に得られる。
宮崎監督のジブリ作品ではあえて線を歪ませた建物なんかが登場してくるわけですが、それとは違った方向での、アニメの可能性を見せてくれていると思います。
次に、私は画期的なことだと思ったのですが、劇中歌が効果的に使われています。歌詞ありの曲が何度も使われている。エヴァでも途中で「翼をください」が挿入されたりということはあるわけですが、そういうBGMに選んだ曲がたまたま歌詞を持っていたという感じではなく、エンディングテーマのように、意図的に歌詞を持ったものが選ばれているというか、そんな感じです。
途中、何度そこで映画が終了になるのか?と勘違いしたか分かりません。それはちょっと大げさですけれども、そう思うような主張の強い曲が、劇中に使われているというのが印象的でした。曲調、歌詞がしっかり映画に沿っているからこそ、これで映画のバランスを崩さずに、むしろそのシーンを印象深くすることに成功しているのでしょう。
最後にネタバレを含むストーリーについてですが、
(読むのをやめるなら、今です)
予告編を観ただけでは気がつかない仕掛けがあって、入れ替わる男女の時間軸が一致していないんですね。こういうのに慣れている人からすると初めから気がついてしまうことなのかもしれませんが、私は、してやられたりでした。
単純に男女が入れ替わって、お互いを探して出会って結ばれて、では、単なるのほほんとした恋愛映画で終わってしまうところですが、入れ替わるのが今とは違う時期の相手だとなると、急にSF的な要素も加わってきて、話が複雑になってきます。
その奇跡を生んだのが、神社の家に生まれた主人公の女の子の力によるものだと思うのですが、その「日本の神」を思わせる演出もまた、忘れられてきている日本の伝統を大切にしようという気持ちにさせてくれて、映画が素敵なメッセージをくれたのだという気分にさせてくれるのだと思います。
主人公の女の子の家系では、過去から夢を見る(入れ替わる)現象が起こっていた。主人公は、これは自分の代で、村を守るためにそうであったのだと理解することになります。(村は、彗星の衝突によって壊滅してしまう。しかし、それを知った男の子が過去である女の子ともう一度入れ替わって、その過去を変えようとする)
相手がこの男の子になったのは、女の子が、生まれ変わるなら東京のイケメンにしてくれと願ったからなのでしょう。入れ替わって行った東京では、とても楽しそうに過ごしていました。
この村の神は、一つは過去から準備して(来るべき時のために巫女がその夢を受け入れられるように?)歴代の巫女に夢を見させてきましたが、その対価として、見る夢の内容は巫女の希望に沿ったものにしていた。といったところでしょうか。
RADWINPSの楽曲と一緒にプロモーションするという多分に商業的な面があったので、そこを嫌う向きもあるかもしれませんが、純粋に楽しめる映画だと思いますし、観終わったあとには、心地よい、観て良かったなあという気持ちが残りました。